2008年 11月号
 
 11月にしては暖かい気候が続いていますが、ひと雨ごとに寒さが強くなります。また、例年になくインフルエンザの患者さんがすでに認められ、しかも、泉州地区に多く認められます。 外出から帰宅すれば、"手洗い""うがい"をしっかりしましょう。うがいは、1回につき15秒以上"ゴロゴロ"をして、口に含む水は5回以上変えましょう。

@ 大阪府下感染情報(10/27〜11/2)
 多い順から、感染性胃腸炎・溶連菌・RS・突発疹・水痘の順です。 また、10月初めから、インフルエンザの患者さんが認められ、しかも泉州地区に多く発生しています。流行とまではいえませんが、突然の高熱で、倦怠感が強く、朝になっても高熱が続くようであれば、インフルエンザを疑う必要があります。

A 当クリニック感染情報(11月6日現在)
 RS感染が認められます。乳児の喘鳴や哺乳低下に注意しましょう。 当クリニックでも10月20日に今期初のインフルエンザの診断をしています。流行とまでは言えない状況です。
B ヒブワクチン(Hib)その2 いよいよ発売
 ヒブワクチンのその後ですが、現時点でわかっていることは、12月19日から発売されること。当初は手に入りにくく、1医療施設で3人分程度しか手に入らないかもしれない。ワクチンの価格は現時点で未定ですが12月初めには判明する。以上です。当初は混乱が予想されますが、いずれ浸透して、日本の子供たち全員に接種ができる日が1日も早く来るように、冷静に発売を迎えようと考えています。
 
  そこで、このワクチン必要性を考えましょう。b型のインフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではありません、以下ヒブ菌と略す)は、後遺症や死亡する可能性が高い髄膜炎などの重症の細菌感染を起こす菌で、日本のように抗生剤が乱用される国では"耐性菌"が増えています。しかも、例えばヒブ菌による髄膜炎は日本のように抗生剤予防投与を行っても十分予防できず、海外ではヒブワクチン導入で十分予防できることがわかってきました。さらに、ヒブ菌による髄膜炎では発病当初の白血球やCRPの数値では診断が困難であることもわかってきました。ヒブ菌に対する免疫力(抗体)は生後徐々に獲得し、5歳以上になるとほぼ100%の人が獲得すると言われています。言いかえると、5歳までに100%のこどもたちがヒブ菌に罹患しており、ほとんどが軽症の感染で経過するわけですが、たまたま髄膜炎などの重症感染になると死亡したり、後遺症を残すということになります。ヒブ菌による重症感染症の発生率は日本で年間約1000例うち髄膜炎は約600例と推測されています。このヒブ菌髄膜炎で、日本で死亡例が年間20から30名、後遺症を残す子供たちは年間100名と見積もられています。
  以上から、5歳未満のこどもたちにあらかじめ予防接種を行い、ヒブ菌に対する抗体を獲得あるいは高めておくことが必要です。

なかじまクリニック 小児科・循環器科
院長 談